まきしま

主にマンションのこと。日々の雑感など。

ONE PIECE FILM REDを見たよ。

 歌が素晴らしいという評判とウタという女の子(ルフィの幼馴染でシャンクスの娘という本来なら麦わらの一味になる要素満載の子)がどうやら今回の敵役のようだという話に興味が湧き、子供たちと一緒にさいたま新都心ONE PIECE FILM REDを見てきました。

 結論から言うと、想像以上に自分の心に残る映画でした。ウタはこれまでのワンピースに出てくる女性たちとは全く違う子で、こんな子いなかったなぁ!という衝撃でこの文章を書いています。一言で言ってしまえば、ウタは「ルフィを束縛する女」です。僕はワンピースの女性キャラは基本的に「ルフィを赦す女」だと思ってて1話の1コマ目から登場するマキノさんを始めナミ、ビビ、ロビン、ハンコック、しらほし…とルフィを本当の意味で制限する子はいません。みんなルフィが海賊王になることを望んでいるので例え言葉はは厳しくても「〇〇しろ」と命じる子はいなかったんです。はっきり言ってしまえばお母さんなのでマザコンっぽくてうううとなるのですがワンピースはジャンプ連載なので少年の理想とする女性像としてお母さんは正しいのかもしれません。。

 でもウタは「海賊やめなよ」とはっきりルフィに要請します。自分の願いがかなえられないと自分の意志を優先してルフィたちと敵対することも躊躇しません。これってウタが母(現在の家族)ではなく幼馴染(過去の家族≒他人)だからなんですよね。

 麦わらの一味(家族)になり得る資格を持ちながら他者である女性を登場させたという点で、これワンピース映画としてめっちゃ新しくて異質だと思うのです。例えば戦いの最中であっても繰り返される「出た~負け惜しみ~」という台詞は、家族だったころの過去と、敵となり他者になった現在の両方が含まれていて、かつて家族だった幼馴染と戦うというこれまでの映画とは違った苦しさや辛さをよく表していました。(そして同じ台詞でもウタ自身がそこにどんな思いを乗せているかが伝わってくる名塚佳織さんの演技力素晴らしかったです)

 もちろん争いもなく苦しむこともない新世界こそ理想というウタの思想はいささか子供じみていますし、何でそこまで新世界に拘るのか最初はよくわかりません。でも過去の物語をウタとして過ごすことで、観客たちは彼女の生い立ちと思いを追体験することができます。赤髪海賊団の一員としてルフィと競争していた少女が世界を変えようとする(あえて言いますが怪物になぜ変わってしまったのか?という物語はすんなりと理解することができます。
 とは言え、もっと彼女のために出来ることはなかったのだろうか?と思う部分もあります。海賊の厳しさを理解しつつ、あれだけ大人が周りにいて、幼い子に運命を背負わせることしかできなかったのは大人の怠慢では!?(憤)

「俺の娘だ」と最後に啖呵を切る前にもっとできることあっただろ!と親の立場からシャンクスを詰めたくなりました。(個人の感想です。。)

 でも助けに来たシャンクスに「会いたくなかった…けど…会いたかった」と告げるウタの台詞は、彼女を一番近くで見てきた観客たち(僕)には効きすぎました。。ウタ…思いがかなったことの嬉しさと運命の過酷さを思うと目から・・・(涙)

 シャンクスと赤髪海賊団を愛しまた裏切られた(と信じた)ウタの絶望と本当の思いを観客たちが理解した時、彼女は「自分勝手で稚拙な闇落ち女」から「赤髪海賊団に愛されたシャンクスの娘」へと変わっています。そしてこれは、他者だったウタがまた家族の一員に戻ったということでもあります。でも皮肉なことに家族の一員に戻った瞬間、ウタはワンピース世界でのキャラクターとしての必要性を失い、画面から退場することになるのです。。

 ルフィに麦わら帽子をかぶせて静かに席を立つその姿はどことなくシャンクスのようでした。

 これまで、映画版ワンピースの敵は屈強なおっさん達でした。元海軍、伝説の海賊、強欲なカジノ王…etc。それに飽きて今回は敵を女性キャラと尾田先生が決めたそうですが「シャンクスの娘で幼馴染」としたことでウタは「なぜ敵なのか説明が必要なキャラクター」になりました。この遠回りにも思える説明が物語の奥行きとなっているのだと思います。物語の結論は正反対ですが、当初の脚本では悪役だったはずが最終稿では自身の能力に悩み周囲を拒絶しながらも自身を受け入れ前を向くキャラクターとなった「アナと雪の女王」のエルサと同じように、ウタも人々の記憶に残るキャラになるといいなぁと思っています。

 最後に、作中の歌唱はAdoさんが担当されていますが、Adoさんのエネルギッシュな歌声がまるでライブに参加しているのような臨場感や迫力を与えており、映画の綺麗な映像と相まって、とても素晴らしかったです!

 アマプラで配信が始まったので加筆してみました。